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俺は釈然としないまま、胸の突っかかりだけが消えてしまっていた。
姉貴が怒っていないことが分かったら、急に疲れた。
ーー脱力だ……。
姉貴の横に座って、俺も枝豆を食べる。どうでもいいけど、塩が良い塩梅に効いていて美味い。
「ちょ、ちょっと! もう少し離れて座ってよ」
「面倒い。ーーんなことより、姉貴はどうして俺に大学に行けって言ったんだ?」
「それは……」
一呼吸置いた姉は申し訳なさそうに、枝豆を摘まんだ。
「見返してやりたいのよ」
「見返すって、誰を?」
「私たちを産むだけ産んで、放ったらかしにしてる親に、『大学に行けている、ちゃんとした暮らしが出来ている』ってのを、ね」
姉にとって大学は、単なるステータスを知らしめるための道具、だったのか。
大学に通えば、生活に余裕があるという証明になる。だけど実際は、俺たちの暮らしに余裕なんか微塵もなくて、今ある生活を維持していく事でさえ精一杯で。
「無理して見栄張ったって意味ないだろ! あんな奴らのことは忘れちまえよ」
「…………」
その沈黙は、言い訳を考えているのか、俺との会話を放棄したのか、どっちだ?
「俺はまだ大学に行くのは反対だし、仮に行くにしたって、クズ親に云々なんて下らない理由で行く気はない! 行くなら自分の意思で行く!」
「……下らなくないでしょーが」
「下らねーよ! クズで最低で自己中な親のことはもう忘れろよ」
親の顔を思い出しただけで、胃がムカムカしてくる。
姉貴は親にコンプレックスがあるようだけど、俺はもうあいつらに人生を振り回されないと決めたんだ。親が理由で大学に行くなんて、絶対に嫌だ!
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