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まだまだ納得し切れない部分は多いけど、姉貴の思っている事は大体分かった。
姉貴が俺を大学に行かせたいのは、俺のため。
姉貴が人生ハードモードなのは、俺のせい。
姉貴の考えをつゆ知らず、目の前の現実に無闇果敢に挑んでいた俺はペアレント-コンプレックス。
「そうか。ーーんじゃ姉貴からしてみれば、俺は居ない方が良かったな。……姉貴には感謝してるからさ、いつでも見限ってくれていいよ」
はあ、俺は何を言っているんだろう。何も考えず、分からずにいた結果がこの台詞か。本当に、最低だな俺は……。
「だからあんたは青臭いガキなのよ」
風船の空気が抜けたみたく、ふっと息を吐いた姉貴の顔は、今まで見たことのないくらい優しい顔だった。
「ガキには分かんないだろうけどね、働いてると大切にしたいものが出てくるのよ。何時の間にか大切にしたいものに囚われて、その柵(しがらみ)の中で生きることが幸せだったりすんの。……幸せはね、損得感情じゃないのよ?」
凄く大人な言葉を頂戴した気がする。姉貴は何時からそんな大人らしい大人になったんだ……。
「っつか、それだと、姉貴にとって俺は人生の幸せそのものみたいな扱いになってるけど、これは俺の勘違い?」
「そのものではないけどね、否定はしない」
あれれ、体の色んなところがむず痒くなってきたぞ、あれれー。
「あんたを見限ることは、私の人生を見限ることにもなる。私は今以上に自分の人生をチープするつもりはないし、させるつもりもない。そういう輩が居たら全力で排除する。ましてや自分で自分をだなんて、あり得ないわ!」
「すまん姉貴、……お前ってそういうキャラだったっけ?」
姉貴は“あり得ないわ!”の部分でガッポーズを取ったまま、何かに気付いたらしく、恥ずかしさのあまりか固まってしまった。
「う……うっがーーー!!」
おお、動きだした。っつか、暴れだした。
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