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「……は!? あんた今なんて言った? 就職って……なんで大学行かないの?」
姉が血相を変えて立ち上がった。
驚いている、というよか、なんか怒ってる?
別に変なことを言ったつもりはない。大学に興味が無いかと問われれば、そりゃあるけどさ。現実的に考えて、今の俺に――俺たちに、大学に行けるだけの経済力は無い。
姉貴が青春を捨ててまで大手企業の就職を実現させたのだって、今回と同じで経済的な理由のためだったじゃないか。それと同じ状況になれば、当然俺も、と考えるのは普通だろ?
「なんでだって聞いてんの! 答えなさいよー!」
姉が俺の右肩を手で突っ撥ねてきた。酔って加減が利かなくなっているのかも知れないが、それにしたって力を入れ過ぎだ!
俺はよろめいた。失われた体のバランスは、姉が俺の両肩を掴むことで補われた。そして思い切り良く今度は両肩を押し込まれ、とうとう俺の体のバランスは崩壊した。
「やめあぶっ! っつあ~」
背中から倒された、肩めっちゃ痛い! な、なんなんだよ……。
「あんた大学に行きたくないの!?」
「行けるもんなら行ってみてぇよ! バカかお前は……仕方ないだろ? 金が無いんだよ! それになにも、大学に行くことが全てってわけでもないだろ。俺の人生だし、俺が決める! つかもう決めたんだ。姉貴にとってもその方がいいだろが!」
仰向けで寝る俺の上に、姉貴が四つん這いになって乗ってくる。
「うっさいボケ!」
姉貴が言葉の勢いのまま体を揺らすと、床と姉貴にプレスされた俺の体がコリコリと痛む。
「あんたの人生はあんたのものだけじゃないでしょーが! そんな青臭いガキみたいなこと言うようじゃね、どーせ社会に出たってまともにやっていけないんだから! あんたは大学に行きなさいよ!」
うるせーし、痛てーし、酒臭ぇーし、夜なのに暑いし、勉強は捗らねーし、ムカムカしてきた。
マジで、これはキレてもいいレベルのイライラだわ。
「うっとうしい……。退けよ姉貴。行く行かないはともかくとして、とりあえず退け。退かないとぶん殴るぞ」
「あんたねぇ……。あんたが大学に行くって言うまで退くつもりは――」
姉の体が俺の上で小さく三回揺れたあたりで、俺の堪忍袋の緒が切れた。
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