理不尽な姉

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 誰が呼んだというわけでもなく陽は昇り、朝はやってくる。  とうとう自己嫌悪で一睡も出来なかった。  貼り付いた右拳の違和感がまだ消えない……。  人を殴ったのは生まれて初めてだ。 「…………はぁ。マジで何考えてんだか。……なに考えてんだよ」  俺には俺の考えがあって、姉には姉の考えがある。当たり前のことだ。  俺は間違ったことを言ったつもりはない。大学に通うだけの資金が無いのは共通の事実で、頼れる宛てもまた無くて。  貧乏に屈して人生を妥協することは、そんなに許せないことなのか? ましてや俺の人生で、俺が決めたことに、姉貴がどうして反発してくるのか。 「全然分かんねー……」  俺がベッドでお手上げ状態になっていると、部屋の向こうから微かに姉の生活音が聞こえてきた。  今日もせっせと朝から仕事に出かけるのだろうか。それとも流石に休むのか。顔に青痣を作ったんじゃ、そりゃ人前に出られないよな……。 「仕事に行って来まーす!」  姉は独り言にしては陽気で嫌味っぽい挨拶を残して、気配を消した。 「バカだろあいつ、こんな時くらい会社休んどけよ」  俺への当て付けのつもりか? だとしたら大成功だよ。  ――罪悪感が半端ない。  手を上げたのは俺が百パーセント悪い。これに付ける免罪符は存在しない。イラついたのは俺の未熟さのせいで、姉貴のせいにしたらダメだ。  言ったことが正しくても、やったことが間違いなら、それは過(あやま)ちに他ならない。分かってはいても、どんな顔して謝ればいいのかが分からない。  俺の主張が間違いだと思いたくないし、けど手を上げたことは謝らないといけないわけで……ばつが悪いにも程があんだろ!
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