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アルバイト先のイタリアン料理店でウエイトレスをやっている片桐先輩に、彼女はよく似ている。
ウエイトレス姿のイメージしかなかった先輩に、ノースリーブを着させて垂らしている髪を後ろで一束に結ったら、まさに目の前にいる彼女が出来上がる。
……ってかもう間違いないわ、本を読むのをやめて、打って変わって、楽しそうに手を振る人懐っこい先輩らしい愛らしさを発揮され、俺の想像は確信になった。
「今日も外あっついよねー。お日様は加減を知るべきだよ」
かったるそうに首を伸ばす亀みたく若干前かがみになった先輩は、持っていた本で自らを扇いだ。
「先輩は避暑で図書館に来たんですか?」
「よくぞ! 見破ったー……」
台詞の後半に覇気がない。
「一目瞭然ですよ」
だけど先輩はすぐに復活する。
「ときに少年。何か悩みがあるようだね。私で良ければ相談に乗るよ」
あぁ、せっかく姉貴が帰ってくるまで勉強して忘れようと思ってたのに……。
「悩んでる様に見えますか?」
「うーん。そんなナンセンスな質問をしたら“俺、悩んでます”と言っているようなものなんだけどなー」
どうやら片桐先輩には筒抜けだったらしい。
片桐先輩とはバイトの暇な時間に、よく俺の姉貴の話をして盛り上がる。
一人っ子である先輩は、俺と姉貴のことを仲の良い姉弟だと思っていて、俺が姉貴の話をすると自分のことのように一喜一憂してくれる。
姉貴とも仲が良くて、俺のこともそれなりに知っている片桐先輩なら、相談相手としては申し分ない。
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