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「そっかー。暴力は良くない。それで、暴力を振るわれた後のお姉さんは、何か言ってたの?」
「……え? いや、姉貴は動揺したみたいで、無理もないと思うけど、逃げるように部屋に篭ったきりで。あれから一度も顔は合わせてません」
「込み入った事情はともかく、顔を殴ったことは謝らないといけないよ、そうだよね?」
ついには顔を殴った事実まで、先輩の口から自ずと出てきた。
これはもう突っ込むべきなのだろうか?
即答できなかった俺に“渇っ!”とばかりに、片桐先輩は生真面目に「こういうのは謝った者勝ちだよ!」と、押す必要のない背中を押してくれた。
「心配しなくても、もちろん謝るつもりです」
うんうんと隣で頷く先輩は、なぜか誇らしげだ。
ーー昨晩の出来事。
ーーここぞとばかりに出会った、俺と姉貴の共通の知り合いであり、おそらくは良き相談相手。
ーーそして、なぜか俺の教えていない事情の一部を知っている先輩。
これらを偶然で片付けてしまうことはできない。何者かが裏で糸を引いているのを感じる。そいつはきっと陰湿な奴で、頭の切れる奴で、素直にモノを言えない奴に違いない。
「片桐先輩」
「なにかな」
「ありがとうございます。先輩と話してたら、心が少し楽になりました」
「……そう? そっかー、まだこれといって大したアドバイスできてないけど。良かったね!」
本格的に悩むのはまだ早かった。
姉貴に謝って、昨晩の話の続きをちゃんとして、それで困ったことになったらまた悩めばいい。
片桐先輩がここに居てくれていること、これほど頼もしいことはないよ、姉貴。
そして先輩ーー笑顔がマジ天使です、最高です!
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