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シャリシャリ…
音を立てて氷を頬張るゼイスを尻目に蒼龍は本に飽きてコンセントレーションのトレーニングを行っていた。身体がだるいとは言え、自らの鍛錬を怠るわけには行かないからだ。
シャリシャリ…
ガリガリ…
「煩いな…」
機嫌悪く蒼龍が呟いた。そう言ってゼイスを見つめる。
「氷しか食うのが無いんだよ。珈琲飲むなと言われるしな…。許せ兄弟」
そう言って悪びれもせずゼイスはそう呟いた。
「隊長…トレーニングしたら?」
とりあえず、その音を消す為に別提案するが…
「却下だ」
と調子よく言われた。
「だったら…」
そう言って蒼龍は右手に爆炎を溜めだす。
「ぬ…反乱か?受けて立とうぞ」
そう言ってゼイスは蒼龍に対してモップを向けた。いつもの刀を持つ型で…。
刹那―
聞こえた、歌。少女の声に乗った悲しみの歌。
蒼龍は耳を塞がず平然とそれを聞く。
しかしそれよりもゼイスは、その音を聞くと同時に顔色が強張った。
「隊長?」
蒼龍がそう呟くと歌は次第に力を無くし消えていった。
暫くの無言。その1秒とも1分とも分からぬ無音の時間。ゼイスは呟いた。
「クライスト…」
いつもの悪ふざけする顔ではない。そして蒼龍が知っているゼイスの過去の因縁の名。
母国を死へ追い詰めた男の名。神になろうとした男の名。そしてゼイスの親友の名。
ゼイスはふらつきながらもベッドから立ち上がった。そしてシャムシールを取る。
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