嘘つき

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かみさま、僕は叶わない恋をしました。 してはいけない恋でした。 「俺さあ、彼女できちゃった」 隣を歩く男がそう呟いた。 照れたような顔を手で隠して、いひひとおかしな笑い声をあげながら。 恥ずかしいからか何なのか、自分と目を合わせないように彼は地面を見つめていた。 「お前に? 彼女?」 「うん、そー。3組のぉ、山本さん」 俺の脳裏にショートカットの笑った顔が印象的な女の子が浮かんだ。 3組の、山本さん。 優しくて小さくて可愛らしくて、それで、 「なんかこう、守ってあげたくなる感じの子でさぁ」 そう、守ってあげたくなる感じ。 へらへらと笑いながら隣を歩く男に、俺はふーんとてきとうに返事をした。 小石を蹴りながら歩く男は、俺が彼女の話を聞いていようがいまいが構わないらしい。 今はとにかく彼女のことを自慢したくて仕方がないようだった。 「なんか昨日さ、いきなり呼び出されてさ。今どき直接告白だぜ? なんかさぁ意外だよな! あの子そんな勇気なさそうなのに」 「そーだね。俺なら無理だわ」 「だろぉ? んでさー、なんかそん時めっちゃ可愛く見えてー」 顔を赤くしてうつむく、小さくて守ってあげたくなる感じの女の子。 そんな子から好きですなんて言われたら、そりゃあ、いいよって言いたくなるよな。 「お前、山本さんのこと好きだったの?」 「えーいや、別に好きだったって訳でもないけど。でもさ、こうゆうのって付き合ってくうちに好きになったりするじゃん?」 「あーあるある」 そうだな、付き合ってくうちに良いとことか可愛いとことか沢山見えてきて、だんだん好きになってくよな。 そんでいつの間にか大好きになるんだよ、胸が痛くなるくらいに。
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