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面の男は妖魔の破壊し尽くされた肉体を見下ろしながら、苛立ちを孕んだ声色で言い放つ。
「おい猿…聞いてんのか?」
「…ふっ……大人しく言うと思ってガォゲぇッ!!?」
セリフの途中、無言のまま男の足に力が篭る。がぼん、と内臓が潰れた。
「じゃあ死ね」
信じられない量の殺気が妖魔を圧迫する。 本当にやる気だ。奴は躊躇しない。だがそれは裏返せば、必要な情報を話せばある程度の時間は稼げる事を意味する。
一秒間にしては余りにも多すぎる量の考えを思考して、結局妖魔は情報を漏らす事を選んだ。
「…この先で、私の仲間と戦っている」
「そうか…。
ミッキィに何したんだ?」
「お前らが最初に戦った蟷螂の血には中毒性が含まれている…。返り血を浴びたものは無意識にとあるポイントに誘われるようになっているのだ…」
それを聞いて、男はすぐさま身を翻す。もう聞き出したい事は無いらしい。それともこれ以上は吐かない事を分かっていたのか。
「ティア、すぐに行くぞ。場所教えてくれ」
「う、うん…分かった」
「はははっ…まさか助けに行くのか?無駄だ。あいつは私に実力こそ劣るものの、残忍性においては」
その台詞が最後まで続く事は無かった。男の右手が閃光を描いたと思った瞬間には、もう猿妖魔の頭部は消失していた。
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