佐藤草介、前科一犯

2/16
107790人が本棚に入れています
本棚を移動
/1641ページ
~前回までのあらすじ~ 草介ついに逮捕。 俺が連れ去られてから約1時間が経過した。 今ではどこを走ってるかも分からない。外の景色が見えないのだ。 どうも窓ガラスに細工をしているらしく、中から外を見えなくしているらしい。いや、それじゃ運転出来ないか。だが少なくとも俺には見えない。魔術迷彩は種類が多いからな。 「はあ…」 一つため息をつき、昼間の出来事を思い出す。 『佐藤草介、貴方を連行します』 あの後、眼鏡をかけたお姉さんに拘束された俺は、そのままあれよあれよと言う間に護送された。 護送。 護送である。 いかにもな高級車に乗せられ、当然のように後部座席の真ん中にぶち込まれ、仁王像みたいな黒服の男に挟み込まれる形で座っている。 これじゃまるで犯罪者だ。 容疑者佐藤草介。 明日には新聞三段抜きしたりして。 そう考えると、割と本気で笑えなくなってきた。 大抵のことでは動じない自信があったが、流石にこれは精神的動揺が隠せない、と思っていただこう。 というか本気で泣きそうだ。 何で俺が退院した翌日に犯罪者まがいの扱いを受けなきゃならんのだ。 無職に加えて前科一犯なんて、こんなんじゃ両親に顔向け出来ない。 というか思い返してみれば帰って来てからろくな事が無い。 父さんと母さんはいつの間にか死んでるし、就職は全く手応えがないし、妙な奴に弟子入りをせがまれるし、冒険王ビィトは連載休止してるし…、ロックマンDASH3は知らないうちに発売決定して知らないうちに発売中止してるし。 「ぐっ…ううぅ…おおぉ…!」 ひどいよ…こんなの…あんまりだよぉ…。 「お、おい…」 突如啜り泣きを始める俺に驚いたのか、両隣の黒服の男達がギョッと表情を強張らせた。 「いい大人がみっともなく泣くなよ…。しっかりしろ」 「お、俺はまだ未成年だ…!」 「え?」 「捕まえるんだったら、そのくらい調べて来いよ…!」 「そ、そうなのか…。 失礼した…」 気まずそうな顔で侘びる黒服の男。やめろよ… 真面目に謝られたら怒れないだろうが。 「……くそ……くそぅ…」 手首につけられた円環状の魔法陣は未だに俺を自由にさせる気はないらしい。 ぶっちゃけた話こんなクソみたいな拘束術式、壊そうと思えば一瞬でハッピーターンの粉みたい出来る。 それをしないのは、実行すれば確実に面倒な事になるからだ。
/1641ページ

最初のコメントを投稿しよう!