一級を目指して

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魔術師と妖魔は、古来より非常に密接な関系で繋がっている。 魔術師と切っても切れぬ因縁で結ばれた妖魔達は、世界のありとあらゆる場所にその存在を潜ませているらしい。 中でもヨーロッパ諸国は妖魔の強さ、出現数、頻度において世界でも有数のホットスポットらしく、世界中から強力な魔術師達が多く集まっているそうだ。 そこにある協会支部への配属がこづみの卒業後の進路だった。 何年も前から親にそう言われていたらしく、本人は苦々しく語っていた。 つまり、若いうちにお国を離れて本場で働かせるというのが、こづみの親御さんの思惑というわけだ。 この話自体は10代中盤の頃には既に持ちかけられていたが、こづみはこれに対して頑なに反発。 その理由は、彼女が目指した夢に起因している。 現在、こづみの魔術師としての種類は召喚師である。 手持ちの魔力で契約を結んだ神獣や魔獣を使役し、魔力を供給する代わりに敵の相手をしてもらう職種だ。 曰く神獣や魔獣、いわゆる召喚魔はどれも気難しい奴らばかりであり、こづみも仲良くなるまで相当な時間を要したらしい。 気難しいというより、彼らは人間を見下している。 なので天界や魔界から呼び出しても契約を行えない。 例えそれが成功したとしても、途中で見限られて一方的に反故にされてしまう。 故に魔術師の中で召喚師になれる人は本当に一握り。 ましてや数体の神獣を従える事など不可能。 つまり召喚師になる事自体が困難というわけだ。確かに異世界でも召喚師はあまり見なかった。知り合いに一人いるくらいだ。その辺は共通しているのだろう。 そんな中で、こづみは学生の身で三体もの神獣と契約を結んだ。 歴代でも本当に稀なケースだ。 数十年に一人の逸材でも困難な、それこそ奇跡とも呼べる所業を行ったのが、識神こづみその人なのである。 本人は謙遜していたが、こづみ自身に昔から備わる不思議な人徳が作用しているのだろう。 召喚師の格は召喚魔の質と量で計られる。 日本人の中で唯一六門に名を連ね、召喚魔術師の頂点である【五十嵐源蔵】。彼は八体もの強力な召喚魔を自由自在に操る。 そいつでさえ、学生時代に従えた召喚魔は一体が限界だった。 五十嵐というおっさんは六門の中では序列三位。つまりナインよりも格上。 こうやって比較してみると、こづみさんの異常さがよく分かってくる。
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