一級を目指して

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が、こづみが目指しているものは召喚師ではなく妖育師。 曰く、妖育師は前線で召喚獣を駆って戦うタイプでは無く、現代に迷い込んだ神獣や魔獣を保護、コミュニケーションの確立を旨とする職種だ。 つまるところ愛護団体みたいな奴だ。こづみは自分の治療魔術を是非その事に役立てたいと熱弁していた。 しかしこの妖育師。 日本にしか存在しないそうだ。 イタリアなんぞに行けば夢が叶うのは遅くなる。というかぶっちゃけこづみは戦闘とか他者を傷つけるのを良しとしない。それが例え妖魔であったとしても。 が、識神家が代々営んで来た生業は退魔師。当然こづみも退魔師になるもんだと思っていた親や祖父はこの話を聞いて驚愕。 特に祖父の方が激昂した。 激昂して、最終的にスーパー地球人になったらしい。 その怒りに比例するように、こづみは学院で高成績を叩き出した。 元々優秀だった彼女が本腰を入れて魔術の勉学に打ち込んだのだ。 全ては親への反論に中身を持たせる為。彼女が選んだ方法は限りなく優秀である事。 私はこんなに優秀なんだから、ちょっとは融通きかせろや。みたいな。 識神家でも歴代類を見ない才覚を努力で研ぎ澄ました彼女は、次第に家庭の中での発言力を高めて行った。 一年にも渡る長い話し合いの末、両親からある条件が立ち上がった。埒の明ない問答に、両者とも丁度いい落とし所が欲しかったのである。 それは卒業までに一級魔術師の資格を習得する事。 それを成し遂げれば、日本に残って自分のやりたい事をやってもいいというのが、親御さんにとって最大の譲歩だった。 それ聞いたこづみはその日から一層魔術への修練に励んだ。 二級魔術師の資格を取った後には協会からの学生用依頼を凄まじいペースでこなし、少しずつ、だが確実に一級への道のりを歩んで行った。 そして後少し。 もう少しのところで、ある問題が起こった。それが前回の実地演習である。 あれを無事に終わらせられれば、なんとか一級へ届く予定だったらしい。だが、ツチノコ先生がご乱心したせいで任務自体が御破算。 協会は後始末に追われそれどころでは無くなり、こづみの一級昇格の話もなくなってしまった。
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