一級を目指して

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ちなみにこの報告を受けたのはつい先日の出来事。 観念したこづみは、身近な人への出来るだけ早い報告をする為に、今日俺の部屋へと赴いた。 これが、事の顛末。 識神こづみが長年抱えていた問題の結果は、理不尽な形で幕を閉じたのだ。 ◇ 話し終えた頃には、すっかりお茶は冷めてしまっていた。 こづみの話を聞いて、今度は俺が押し黙ってしまった。急に多くの話しを聞かされて、頭がパンクしそうだ。 ええと、つまりなんだ。 どういう話だ。 「イタリア…って」 イタリア。 パッと思いつくのは、トマト。 そしてピザ。コロッセオ。 赤い帽子とヒゲ。 燃えるゴミは月、水、金。 えっと、あとはトマト。 そしてトマト。 このくらいか。 博識過ぎてヘドが出るな。 「卒業って事はあと何ヶ月だ?」 「魔術学校は少し特殊で、卒業式が10月の終わりにあるんです」 「…は?」 え、ということは。 ちょっと待て。今日何日だ? 確か九月の第三週の始めだから…。 「あと二ヶ月もないじゃないか」 何じゃそりゃ。 「…はい、そうなんです」 「いや、お前、はいじゃないだろ…」 つまり、あと一ヶ月ちょっとでこづみはこの街からいなくなるって事だ。 おい待て待て待て。 「…親が勝手に決めた事なんだろ?お前は本当に納得してるのか」 「……………」 こづみは俺の質問には答えない。ただ唇をわななかせ、悲しげな表情で俯く。 愚問だった。 納得している訳が無い。 あの内気なこづみがここまで反発したというのだ。余程諦められない夢なのだろう。 この場合ネックになっているのが、こづみが親の条件を飲んでしまった事だ。 なまじ対等に交渉してしまっただけに、今更反故にするわけにはいかない。 つまり逃げ場無し。 イタリア待った無し。 配管工配属不可避。 もうクッパを溶岩に突き落としてピーチ姫を救い出すしか方法は無いのか? 非常に由々しき状況だ。 まずい状況というか、既に後の祭りなんだが。 何もかも終わっている。 「…ど、どうにもならないのか?交渉の余地とか…」 「もう、今からじゃとても…」 「…そうか……」 そうだよな。 だってこれは事後報告なのだ。 既に試合は終了している。 例え安西先生でも手の打ちようがないだろう。
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