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「そ、そんなの無理ですっ…!いくらナインさんでも、資格授与の権限は元老院の人達が…」
「まあ、確かにあたしがそういう決定権を持ってるわけじゃないけど、ある程度の発言力は持ち合わせているつもりだよ。
もしこづみちゃんにその気があるなら、色々とお手伝いをしてあげてもいいかな」
「な、なんで…」
こづみは一度言葉を詰まらせて、
「なんでそこまでしてくれるんですか…?今日初めて会ったばかりなのに…」
それは当然の疑問だった。
こづみからすればこいつは雲の上の存在なのだ。
そんな奴がいきなりしゃしゃり出て来て惑わせて、一体何がしたいんだろう。
ナインは不適にヒヒッと笑い、顔をずいっとこづみへと近づける。前髪が触れ合いそうなその距離感に、こづみの表情が一気に緊張した。
「こづみちゃんの祖父って、識神幻斎でしょ?」
「…そ、そうですけど…」
「だったら、いくら頑張っても無駄かもね」
その一言により、しんと一室が静まり返った。唯一こづみだけが、唖然としたままおもむろに口を開く。
「…な、何でですか…?」
「幻斎は昔から目的の為なら手段を選ばないからね。
今回こづみちゃんの昇格が取り消された話ってのは、裏であいつがなんかしてた可能性があるよ」
「…………え?」
大きな両目を、更に見開く。
唖然としたまま、こづみは徐々に震え始めた。
「そんな…お爺様が…」
混乱と悲壮を隠せぬまま、こづみは目尻に涙を浮かべて低くうな垂れた。
突拍子もない事実だったが、当の本人であるこづみはそれを否定しようとはしない。
ということはつまり、彼女にも何か思い当たる節があるのだろう。
話には聞いていたが、思ったより識神家は家庭環境が悪そうだ。
実の祖父が孫の昇格を裏で取り消す。それはつまり、交わした約束を不当な行為で破ったという事だ。
理由は何だろう。
愛情の裏返しか?
それとも、そこまで妖育師とやらが気に入らないのか?
日本にとどまる事が気に食わないのか?
それに退魔師の本場つっても、スポーツみたいにただ現場の人間のレベルが高いだけじゃない。
多分、任務が危険なんだ。
それも戦闘系統の任務が。
それにこいつは召喚師。
こづみが強いんじゃない。
こづみが使役する使い魔が強いのだ。
死ぬ時は本当にあっさりと死ぬだろう。 修羅場を潜らせるには、あまりにも危険すぎる。
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