一級を目指して

10/12
107973人が本棚に入れています
本棚を移動
/1641ページ
それに対するナインの反応は、今までとは打って変わって淡白なものだった。ただ、「そうかい」とだけ言い、微笑みながら小さく頷いた。 「…そういう事なら、君の入組を認めよう。歓迎するよ。家にはあたしの方から掛け合ってみるよ」 「あ、はっ…はいっ。宜しくお願いします…」 「もー、そんな畏まらなくて良いんだよ?こづみちゃんは可愛いなー」 ナインはこづみの両肩を叩きながら、楽しそうに二ヒヒと笑う。 それにつられて、こづみもぎこちなく笑った。 そんな様子を、俺は憮然とした態度で見守っていた。 「…こんなに簡単に決めて良いのかよ?」 「はい、リーダーはナインですからね。私がどうこう言う権利はありません」 いや、構成員自体が少ないなら、一人一人の意見が尊重されるもんじゃないのだろうか。 「それに、私は特に反対してるわけではないので」 「…………」 それ以上、俺たちの間で会話が展開される事はなかった。 まあ、初めから俺が口出しすることじゃない。 しかし、本当にこれで良いのだろうか。なんだか全部ナインの思惑通りに進んでいる気がする。 吾妻さんは一枚噛んでいるのかいないのか微妙な線だが、どちらにせよきな臭さが抜けない展開だ。 まあ、こづみ本人もやる気出して元気になったみたいだし、取り敢えず俺は何も言わないでおこう。 ◇ 「ではまた会おう、青年達よ」 その一言を残して、ナインと吾妻さんは今度こそ去って行った。 というか帰り際の会話から察するに飲みに行った。 吾妻さんはともかく、ナインは見た目がアレなのでアルコール摂取は大丈夫なんだろうか。 明日捕まったりしてないだろうな。 流石に遅くなっていたので、こづみを家まで送っていくことにした。 昨日雨が降ったせいもあってか、今日の夜風は少しばかり肌寒い。 そう言えば冷房を使う機会も近頃少なくなっている。少しずつ秋が見えて来たようだ。 「まさか、こんな田舎町に天位魔術師が来てるとは思いませんでした」 「そうだな」 というか知らなかったのだろうか。こづみはそういう情報を見逃すタイプじゃなさそうだし。 じゃあ認知出来なかったのは世間の方か。 「ナインさんは神出鬼没で有名なんです。本部の人でも姿を見るのは稀らしくて」 「ふーん」 まるでツチノコみたいな奴だな。 いや、ツチノコは土村先生か。
/1641ページ

最初のコメントを投稿しよう!