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「いきなり大声出すなよ…」
「そ、それはつまりッ…!佐藤さんが俺の師匠になって貰え」
「いや、違うし。何言ってるのお前」
せっかちな高槻に向かって小さく嘆息し、頭を軽く掻きながらぶっきら棒に返す。
「昨日みたいなのがまた暴れたら危ないだろ。だから、お前の仕事を少し手伝ってみようかなってだけだ」
「そ、そうですか…。
いえ、それでも有難いです。
佐藤さんの様な手練れに手伝って貰えれば 、こちらも大きな助けになります!」
予想、というか妄言が外れて少し気落ちするも、高槻は本当に嬉しそうな笑顔を浮かべて喜んでいる。
こいつ、まだ全然諦めてないな。師匠になんかなるわけがないのに。
「協会へは俺から伝えておきましょう!では、妖魔狩りの日程は日を追って連絡いたしますので!」
「いや…まだやると決めた訳じゃ…」
「それでは佐藤さん、お邪魔しました!!」
「あ…おい…」
引き止めるも時既に遅し。高槻は俺の静止の声も聞かず、アラレちゃんみたいなスピードで帰って行ってしまった。
「はあ…」
高槻が帰るまで30分も経たなかったが、やたらと疲労した気がした。
また来るんだろうか。
いや、来るんだろうな。
もしかしたら俺は、思っていたよりもずっと厄介な事を引き受けてしまったのかもしれない。
8月28日。天気は晴れ。
俺が本格的に非日常との出会いを果たしたのは、夏の終わりだった。
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