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「どうなって、やがる…」
キッドの当惑は、概ね当然のものと言えた。
「なんで、佐藤さんが鬼ヶ島に…」
困惑するエリーゼ。
ここは完全に隔離されているはず。
自分達も、コリンのお陰でやっと侵入を果たしたのだ。
なのに、何故。
「鬼ヶ島…。そうか、やはりここは結界の内部か」
キッドの言葉を拾い上げて、コリンが周りを見渡しながら呟く。どうやら彼女らも混乱しているらしい。それを見て、ナインは自らの意志で来たのではないと悟った。
となると、あの四人を喚び出したのは、やはり鬼神の仕業だろう。
「…人柱だけを連れて来るつもりだったが、少々術式の範囲が狂ったか。どうやら、要らぬものまで召喚してしまったようだな」
「召喚ーーーだと?」
草介を含む四人を見つめながら、鬼神が静かに呟く。それに対して、コリンは過敏な反応を示した。
「おいデカブツ。お前、桃太郎君をここから召喚したというのか?」
「ああ、その通りだが…ん?お前、暁鈴の末裔か?なんだ、劉家まで来ていたのか」
「いいから答えろ」
「なに、簡単な話だ。この結界は、そこのガキを要として維持されている。ただ術者というだけではない。この結界が肉体の一部であるほど、強い繋がりで結ばれているのだ。
それは閉じ込められている俺も例外ではなく、そのガキの一端となって存在しているということ。俺は繋がりをより強靭なものするために、そこの桃山田の血を貰った。さすれば、俺と人柱は一心同体に限りなく近似する」
鬼神は淀みなくこう続けた。
「そして空間転移を使って、ここに呼び寄せた、ということだ。他でもない、俺の一部をな。見たところ、お前らはその時そいつに接触していたようだが」
そこでコリンは、ふと桃太郎の台詞を思い出す。
『結界の正式な解除には、僕の肉体が必要なんだ』
(まずい…)
文脈から察するに、鬼神の狙いは桃太郎本人。どうすれば封印の解除に至るのかは知らない。だが、この結界は桃太郎を起点としている。
殺せば、それだけで解除されるかもしれない。というかその可能性が高い。
コリンがそう思考していた時には、既に鬼神の手は桃太郎へと伸びていた。即座に術式を起動させるが、間に合わない。マリンも始動しているが、明らかに出遅れている。
「いかんっ!桃太郎君っ!逃げーーー」
瞬間。
ばしぃん、と。
誰かが鬼神の手を払った。
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