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「妖魔との戦闘を試験の一環として取り入れる事は、そんなに珍しい話じゃないけど、いくらなんでも今回は不自然。普通ならもっと弱い敵を対象にするはず」
堰を切ったように喋るティアの声には、今までに無い熱が篭っている気がした。
「だから、土村先生が協会の日本支部に応援を頼んでくれた。後は協会の魔術師に任せて、私たちの実習は中止になるはずだった。
でも…」
『その戦力でも十分に続行は可能。よって増援は認められない』。
それが協会の下した判断だったそうだ。
協会とかこっちの魔術事情についてド素人の俺だが、その俺が聞いても物凄くきな臭い話だった。
つまるところあれだ。明らかにおかしい任務なのにも関わらず、依頼者が「知らねーよ。いいからやれ」と言っているような状況らしい。なんだそれ。魔術業界って以外とブラックなのだろうか。
「でも放っておいたら住民に被害が出る。かと言って私達だけでやるのは危険がある。怪我人はおろか、仲間から死人なんて出したら悔やんでも悔やみ切れない」
拍子を置いて、首だけ俺の方へと向き直す。そこで初めてティアと正面から向き合った気がした。
「そんなタイミングで来たのが、貴方だった」
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