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そうポツリと呟いて、ティアは困ったように下へと俯く。暗いのもあって表情を伺い知る事は出来ないが、少しだけ、声が震えていた。
「…ミッキィが?」
「うん。ああやって強気に振舞ってるけど、美月は今とても怯えてる。だから普段より疑い深くなってる」
「つまり…?」
「つまり…えっと…」
自分でも少し混乱しているのか、焦った視線を泳がせる。口下手なりに一生懸命に伝えようとしているのだろう。
「貴方に酷い事を言ったのはあの娘の本心じゃない。だから、その…あまり責めないであげて」
「……………お前」
ティアは、いい奴だった。
それこそ若干引くぐらい、予想外なまでに、行き過ぎたくらいにいい奴だった。友人の為にここまで行動出来る人間は決して多くない。
正直彼女に対して怒りを感じているわけではないのだが、ここまで真摯に訴えられて適当に流せる程俺は空気が読めないやつじゃない。
「分かった。美月に関してはティアの言う通りにしよう」
「ほ、本当?」
「ああ。そもそも最初から怒ってない」
「ありがとう」
彼女は微笑みこそしなかったが、心の底から安心したような声色でお礼を言う。
俺の煽り耐性を舐めるな。尤も顔について触れればその限りでもないが。
「けどさ…お前はどうなんだ…?」
「…何が?」
「いや、俺の事疑ってるならそんな事話してもいいのかよ」
俺が本当に敵だとしたら、堂々と胸の内を晒して得られるメリットなんざない。ましてや仲間の非礼の謝罪など以ての外だ。
「別に疑ってないわけじゃない。
でも、高槻君があんなに人を慕っているのを見たのは初めて。
だから…うまく言えないけど、貴方は悪い人じゃない。そんな気がする」
拍子を置き、ティアはクスリと笑って、
「それに私も、キャベツ太郎は大好きだから」
こりゃあ、おっきもんやでぇ…。
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