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カオルくんが自販機で買ってくれたアップルジュースを飲む。
冷たくてとても美味しかった。
「しのさ、ここ数ヶ月なんかずっと怒ってるだろ」
「そうだね」
「俺のせい?」
「ううん、違うよ。……私のせい」
「何で変かは分からなくても、しのが変なのは分かるよ。……何でも話そうって約束したのに、何で言ってくれないのかなって」
「女には秘密があるものなんだよ。みーちゃんも言ってた」
カオルくんが飲んでいるのはサイダー。
耳をすませばこっちまでシュワシュワという音が聞こえてくるんじゃないかと、一瞬錯覚してしまうくらい透き通っている。
「私ね、これからもイライラしちゃうと思う。カオルくんに八つ当たりしたりするかもしれないし、私、嫌な子になっちゃうかもしれない。それでも、それでもカオルくんは私の味方でいてくれる?私のこと愛したままでいてくれる?」
「俺は何があってもしののナイトだって言っただろ?どうしたんだよ」
カオルくんの手が私の頬に触れる。
どうやら泣いてしまっていたらしい。その大きな手で涙を拭われた。
「何でもないの。ただ確かめたかっただけ」
「それなら良いんだけど」
「カオルくん、ごめんね。それとありがとう。私もカオルくんが大好きだよ」
そう言うと、カオルくんは私の頭を撫でてくれた。
私はカオルくんが好きだ。
でも、カオルくんはそうじゃない。
普通ではない、けれどこれが普通の片想いなんだ。
「よし、帰ろうか」
「そうだな」
私はカオルくんの手を引いて立ち上がった。
そして、カオルくんと一緒に田沼家へと帰宅した。
「ただいまー」
我が家の匂い。そして隣りにはカオルくんが立っている。
そのいつも通りの日常に私は思わず笑ってしまっていた。
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