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「確かにな。小学校入るまでは普通だったし。いつの間にかこんな感じだったんだよな」 「俺らも年に1、2回しか会ってなかったし。いつの間にかだったな……」 カオルくんの顔を見ながら話す父親たちに、カオルくんはまたため息をついた。 「別にいいでしょ。誰にも迷惑かけて……いや、しの含めここにいるメンバーには迷惑かけてるけど、誰にも迷惑かけてないし」 「いや、王子もう意味不明。でも迷惑かけてる自覚あって真穂は何だかホッとしてます」 「いや、本当にごめんな」 何故かカオルくんが謝ったとき、まわりの女の子たちが我慢できなかったのかカオルくんのまわりに集まった。 「こんな所で会えるなんて感激です。あの、これ差し入れなんで皆さんで良かったら食べてください」 「クッキー?ありがとう。父さんも好きだから嬉しいよ」 「良かったです!!」 それから7、8人の女の子の相手をしたカオルくんのまわりに人がいなくなるのを待ってから、私たちはボーリング場を後にした。 「夏休みで中々、カオルに会えないから皆喜んでたな」 「最後、なんで写真撮ってたの?」 「いや、何かどうしてもって言うから。ネットとかに上げないことを条件に」 前に勝手にネットに写真をアップされ、大変なことになったのを思い出す。 今はカオルくん本人が良いと言わないと写真を撮ってはいけないことが暗黙のルールとなっている。 「本当、カオルくんが一言辞めてって言ったら本当にちゃんと辞めるよね、カオルくんのファンの人たちって」 「皆、悪い子じゃないし。声かけてもらえるのは有り難いしな。でもやっぱりルールは守ってもらわないと、俺だけじゃなくてさらにまわりに迷惑かかるからな」 「まぁ、いい心がけだな」 さほど興味がないのか、当たり前だと思っているのか、聞きなれてしまっているのか、パパがカオルくんの言葉を流すように返事をした。 「祐希くん、俺に冷たいよね」 「お前に冷たいのは、ここにいる全員だろ?」 「……確かに」 「安心しろ、それでも俺はお前をちゃんと愛してるから」 と訳の分からないことを言って、パパがカオルくんを抱きしめた。 暇だったから一緒に遊んだだけだけど、パパも慎太郎くんもテンションは高くてずっと楽しそうで。 それだけで何だか、今日1日がとてもいい日になったような気がした。
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