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カオルくんはテレビの前に陣取り、慎太郎くんとみーちゃんの趣味である大量の海外ドラマのDVDを漁っている。
カオルくんは私といる時は字幕で映画やドラマを見てくれる。
英語を聞き取れるカオルくんにとって字幕は邪魔なはずなのに、本当に優しいなと思う。
「しのが読書終わるまてあと2時間から3時間だろ?やっぱり映画だよな」
「だね」
パスタをチャチャッと20分くらいで作り、カオルくんの前に出す。
一緒に食べ始め、片付けはカオルくんがしてくれるというので私はシャワーを借りることになった。
パジャマ変わりにカオルくんのTシャツと、与田家に置いている私の短パン。
交代でカオルくんがお風呂へ。
私はまた本を読み始めていたので、カオルくんがお風呂から戻って来て映画を見始めたことを10冊目の小説を閉じた時に初めて気が付いた。
私はカオルくんに声をかけることなく、最後の11冊目へ。
読み終え、顔を上げると22時前。
カオルくんは集中して映画を見ている。
映画も終盤だろう。
私も体育座りをして、カオルくんが見ていた映画を一緒に見る。
しかし、今回は字幕も無い。
何を言っているのか分からない映画を見ながら、レイさんを思い出し、苦い気持ちになった。
「カオルくん」
今度は声を出す。
カオルくんにこっちを見て欲しかったからだ。
「読み終わったの?」
「うん」
すぐにこっちを見てくれたカオルくんにホッとして、私は笑う。
いつの間にこんなに独占欲でいっぱいになったんだろう。
「今日はオールしよ」
「途中で寝るくせに」
「寝ないから。いっぱい映画見よ」
私はその気持ちをさらに笑うことで誤魔化した。
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