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カオルくんの長所ならいくらでも言える。
カオルくんには良いところがたくさんある。
けれど、その長所も見方を変えれば短所になるんだって最近知った。
「しの、遅い。置いて行くぞ」
「……どうぞ、置いて行ってください」
「あんた何言ってんの。早く学校行きなさい!!大和も早くっ!!」
「はいはい、行ってきまーす」
うちの家族は仲が良い。
家族だけではなく、父と母の友人家族とも本当の家族のように過ごしている。
うち、田沼家とカオルくんの与田家は何かと一緒にいる。
もう一家族、谷家というのがいるけど今は転勤して車で5時間向こうの県に住んでいる。
私の父は高校の美術教師、母は画家。
まさに芸術に埋もれながら育ってきた私と弟の大和。
大和は小学6年生。
写真という才能に恵まれ小学4年生頃から天才少年ともてはやされ、本人もまんざらではなさそうだ。
そしてさっき私たちを家から送り出したのは母ではない。
“陽子さん”と誰からも呼ばれている祖母のような人。
血縁関係はない。
けれど、私も大和もカオルくんも陽子さんをおばあちゃんだと思って育ってきた。
だから、陽子さんは陽子さんというカテゴリーの人なのだ。
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