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「美乃ちゃんは本当可愛いね。俺、上に姉がいるだけだから妹いたらこんな感じかな?」
「……いりません」
「え?」
「もっとケンカしろ、なんていう兄も、過保護で博愛主義者な兄もいりません」
それは福永さんに言ったのではなく、カオルくんに言った言葉。
カオルくんは私の顔を見た。
「人類、みな平等。素敵な言葉だよ」
「そんな考えだからいつまで経っても彼女できないんだよ。告白されても断ってばっかでしょ?」
「皆を愛してはいるけれど、誰かが特別かって言われるとそうじゃないから。申し訳無いけど、断るしかないんだよ」
真面目にそう言うカオルくんに呆れて福永さんの顔を見る。
どうやら同じような気持ちだったらしく、お互いに目を見合わせて苦笑いをした。
「まぁ、今のカオルが誰か1人に決めたらそれこそ大変そうだけどね」
福永さんがそう言って見つめた先にはカオルくんたちの通う高校の校門。
「今日もすごいな」
私がそう呟くのと、“それ”が私たちに気がつくのはほぼ同じくらいのタイミングだった。
「あ、王子来たよっ」
「王子、おはようございます」
校門には数十人の女子。
カオルくんが登校してくるのを待っていた人たちだ。
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