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「じゃあ、カオルくん福永さん私行きますね」 中学はここから10分くらい先にある。 「あ、ダメだって。中学まで送る」 「でもせっかくカオルくんのこと待っててくれてる人たちがいるのに、まだ待たせるのは申し訳ないよ」 「でも……」 校門前の女の人たちと私を見比べて困ったような顔をするカオルくん。 毎朝こうだ。 いつもは私が逃げるようにこの場を去るのがお決まりになっている。 「美乃ちゃん、俺が送ろうか?」 「いや、悪いですよ。大丈夫です。教室入ったらちゃんとメールするから」 カオルくんにそう言い、私が歩き始めると女の人たちはカオルくんを一気に取り囲んだ。 いつものこと。 いつもと違うのは福永さんが私を追ってきたこと。 「本当に平気ですよ」 「今日はいつもよりカオルが心配そうにしてたから。カオルが来るの無理そうだし」 「……ありがとうございます」 「にしても、過保護だよね。血も繋がってなければ恋人でもないのに」 それは私も思う。 小さな時から私はずっとカオルくんに守られて来た。 そこにあるカオルくんへの絶対的な信頼。 他人に分かってもらえるとは思ってないけど。 「……美乃ちゃんは本当に良い子だよね」 「え?」 「カオルのせいで彼氏も出来ないんじゃない?」 「あはは、確かに。この前、好きな男はいるのかってしつこくて」 もう父親みたいだね、と笑う福永さんと一緒に笑う。 父親で、兄で、絶対的君主でもあり、奴隷のようでもある。 カオルくんと私の関係は言葉では言い表せない。
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