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ガチャ。バタン。
「はぁ~仕方ない連絡するかぁ……」
携帯を後ろポケットから取り出し、ある人物に電話をかけながら、昼食が置いてあるテーブルとイスまで向かう。ふと、イスに座る時、時計で時間を確認すると14時半だった。
(うーん。この時間だと、授業が始まるか授業中かなぁ)
心の中で呟きながら、耳に聞こえてくるプルルルという音をボーと流すように聞く。かれこれ多分15回以上はコール音を聞いている。が、声を聞きたい本人には繋がらず。諦めてサンドウィッチに手を伸ばし、一口食べ切ろうと指を動かすと低く声がした。
「……琴恋か?」
その声は低く掠れていた。
「そだよ。錬二(レンジ)。なんか声おかしくない?」
私の問いに錬二は答えの言葉を紡がない。あぁ、これは……と思った私は、軽く息を吐くと錬二に対し言う。
「錬二さんというお方が風邪ですか?」
私の笑いを含ませたふざけた言い方に、電話越しの錬二からむっとしたような雰囲気が感じられた。弱っている人間を弄るのはあまりしたくないが、相手は錬二。
錬二は私の恋人で、なんと今は元の担任の教師、そして元の彼女の飛鳥ちゃんのお兄様。世の中本当に狭いと思う。
ふと考え事をしているとごほごほと咳をする声が微かに聞こえ、眉を顰める。
「……熱測った?何度だった?」
「……38.0」
「うん。馬鹿か。大人でその熱って辛いだろうになに風邪引き始めにちゃんとしなかったんだよ。舐めてんだろ風邪を」
思わず口調が悪くなる。でも、私は気にしない。だって、錬二と出会った時はもっと酷かったし。それより、錬二の様子が気になった。
「いや、どっかの馬鹿がまた失恋したとかでその愚痴を長い間聞いて、その後も後期の前期試験が近いから問題作ったり、生徒の演習の採点してたりしたら……」
言葉を濁らしながら言う錬二は最終的には、言葉を切った。なんなんだと言えるくらいの感じだが続きが気になるから言わずに言葉の先を促す。
「で?」
「…………倒れた。しかも今日」
「はあ!?そういうことは早く言えよ馬鹿!!今から行くから。お前に拒否権はないからな!!」
「ちょっ…………」
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