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「へぇ・・・橙子が?」
「そうなんです!
びっくりしちゃいました。」
帰宅した和貴さんがネクタイをゆるめてリビングへとやってきてからすぐお茶を出しながらの今日の報告。
今日、一番の話題は買い物途中での出来事だった。
---「かあさん?バレンタインってすきなひとにするの?」
我が家の5歳になった娘は、和貴さんの影響か私たちを“パパ・ママ”とは呼ばす、“父さん・母さん”と呼ぶ。
自分が“パパ”ってがらじゃないだろうといって、橙子に話しかけるときはいつも“父ちゃん”と言っていたし、そのバランスで私の事は“母ちゃん”と言いながら彼女に話しかけていたせいで。
私もそうやって呼ばれるのは嫌じゃなかった。
それでも、彼女がお年頃になったときのことも考えて、こっそりと“父さん・母さん”という呼び方を繰り返していたりして。
そしてそれが成功したらしく口が達者になったとき彼女は私達の事を“父さん・母さん”とかわいく呼ぶようになった。
そのときの和貴さんの顔が今でも忘れられない。
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