禁煙

4/4
前へ
/4ページ
次へ
後日、この突発的な行為は自殺として処理された。 しかし、同僚にはどうしても、納得がいかなかった。 いくら、タバコが吸えないからと、あんな無惨な最期を遂げなくてもいいはずたから。 男がどうして、あんな行為に及んだのか、彼と同じように、表の清掃しながら考える。その理由を。 同僚は何気なく顔を上げた。そして、タバコを一本くわえようとした時、その手が止まった。 「まさか…」 同僚は、それが男が狂った理由だと知った。 それが、事実ならば禁断症状というのが、如何に恐ろしいものか身にしみて分かる気がする。 震える手で、吸いかけたタバコを自分の目線の高さにもってきて立ててみる。 タバコの横では、清潔感に溢れる真っ白に塗装された煙突が、今日も煙りを上げていた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加