前奏

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不審そうにあたしを見ながら、その眼鏡の男性は場所を地図を使って丁寧に教えてくれた。 よく見ると、すごく綺麗な顔。 ぼんやりと、その顔を見ていると目が合ってしまう。 「よければ案内しましょうか?」 「えっ!いいんですか?」 「いいですよ」 そう言われ、あたしは厚かましいと思いながらも、案内をお願いする事にした。 「では、行きましょうか」 「はい!」 歩きだしたその背中を追いかけ、そっと隣に立つ。 綺麗な顔に、思わず胸が高鳴った。 「新入生ですか?」 「はい」 「部に、なにか用事ですか?」 「……はい。会いに来たんです」 そう言うと、その人は複雑そうに苦笑いをした。 その顔に、どんな意味が込められているのかはわからない。
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