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あれは十年前の春の事だった。
私の名前は 林 紀子。
子供が生まれた為、夫の健司と共に郊外のパチンコ店に転勤することにした。
最初開店したばかりでしばらくは大変だったが従業員も増え、落ち着いてから私は日勤だけの業務に就いたのだった。
夜中の十時を回った頃であろうか。
子供が泣き出したミルクを作ろうと起き上がった時、私は部屋の外に誰かがいることに気付いた。
家は店の寮で私達は二階の3DKを借りて暮らしている。
寝室からゆっくりと出てキッチンに向かう。
ガチャリ。
重い金属を引きずるような物音に驚いて後ろを振り返る。
当然だが居間には誰もいない。
電気を点けてミルクを作るだけに専念することにした。
疲れているから過剰に物音に反応するに違いない。
自分にそう言い聞かせながら、ミルクを哺乳瓶に入れて寝室に戻ろうと踵を返したその時。
「うわあぁあぁぁああ!!」
健司の悲鳴が聞こえて私は急いで寝室に駆け込む。
「あなたどうしたの!?」
寝室の電気を点けた時確かに一瞬見えたのだ。
血塗れの鎧を纏った男が健司を睨み付けていたのを……………。
「い……今…………いたよな?」
健司は体をガタガタと震わせて私に問い掛ける。
昔から霊感があった私にも見えたのだ。
泣きやまない子供をあやしながら私は明日、地元の人に話を聞いてみようと思った。
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