151人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
次の日、私は万一の事態を考えて子供の服に数珠を忍ばせ保育所に子供を預け、仕事に向かう。
しかしそこで待ち受けていたのは。
事故で欠勤するという従業員の知らせ。
理由もそこそこに退職願を出していく人。
私は頭を抱える健司に一番古い従業員に話を聞いてみようと持ち掛けた。
杉田さんという清掃員で雇った人がいるという。
その人によれば
昔この土地は激しく血腥い戦が繰り広げられた古戦場跡地らしく、ここで店を構えてもほとんど潰れて更地のままらしい。
土地代も安く、買い取りには打って付けだったに違いないが私は杉田さんに忠告を受けた。
「あんた……見えるなら気をつけてな……」
それから数日後。
私は布団に数珠、枕元に塩を置いて眠っていた。
しかし
ガチャリ。ガチャリ。
ガチャリ。ガチャリ。
ガチャン。
鎧の男は部屋の前をうろついていた。
私はぎゅっと目を瞑り、気付いた健司も緊張していた。
足音が聞こえず不審に思った私はゆっくり目を開けた。
シャッ!
刀が私の鼻先を掠め、上をみれば血塗れの武将が私を憎悪の目で睨み付けていたのだ。
私はその、あまりの形相に恐ろしくなり健司もまた口をパクパクと動かしている。
恐怖が限界を超え既に悲鳴も上げられないのだろう。
オギャア、ウエーン……
子供が泣き出してしまった。
すると武将は私から子供に目を移し、ベビーベッドに近付いていくではないか。
私は子供だけはと思い、思い切り塩と数珠を投げ付けた。
果たして武将は消えた。
「ココカラ……デテイケ」
確かにそう言い残して……………。
私達はそれからすぐに店を辞め、土地を移した。
あの土地にはまだ尚、無念の死を遂げた武将がいるのだろうかと時々思うのです。
最初のコメントを投稿しよう!