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私は四月に同僚を亡くしたことが切っ掛けなのかは分かりませんが、霊的に久しく障害が出ていました。
仕事も三月までは順調で多少辛くても、楽しいと言えるまででした。
しかし同僚の葬儀に立ち会った際に『拾い物』をしてしまったようなのです。
強い障気というかとにかく運が尽きたように不運の連続がおきました。
体調不良、年配の同僚からの執拗なイビリ、新入社員のミスで私が信用を無くしたり、同期は次々と辞め、実家に帰っても居場所が無く、完全に四面楚歌の状態でした。
そして胃潰瘍を患い、仕事の最中に倒れました。
うつ病にもなり、体重が僅か一月で十五キロ落ちてしまい、
「これ以上無理をすれば命に関わりますよ。早急に職場を辞めた方が良いですね」
と医師にも宣告され、私は退職願いを片手にチーフの先輩……仮にA氏にしますが話をしました。
A氏は私に対し至極真摯に話を聞いてくれたため、私は退職願いを差し出しました。
「ココってやっぱり何かあんのかもな……」
A氏はボソッと呟いたので私は思い切ってヒタヒタさんについて尋ねてみようかと口を開きました。
「だってココって……」
プルルルルルル!
プルルルルルル!
「ぎゃあ!!」
私とA氏は飛び跳ねるくらいに体全体で驚きました。
内線でした。
しかし深夜二時にだれが寄越すのでしょう?
私とA氏は目を合わせ、意を決して受話器をとりました。
A氏が「もしもし……Aです」と恐る恐る口を動かしていました。
『あの……警備ですが、二時には従業員の出入り口を全部閉めますので帰る時には正面玄関使って下さい……』
警備の人だったようで私は心底ホッとしていました。
しかしA氏は首を傾げていたのです……。
「俺、三年以上この会社にいるけどこんな電話初めて来たぞ……しかもなんで俺らが残ってるって知ってるんだ?!」
A氏が謎の電話にうろたえている間にも
ヒタ……ヒタ……
調理場からヒタヒタさんが歩いていました…………。
私は正式に退職願いを出して、七月の終わりに怪異の絶えない旅館を後にしたのです……。
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