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頭から手ぬぐいを被り、心を静かに落ち着ける。
ロッカールームの外からは、試合を待ち侘びた観客達の歓声が聞こえて来る。
――これだ、試合前独特のこの緊張感。
この感覚があれば、いつも通り動ける……ハズ。
「ほう、珍しいでおじゃるな」
不意にそんな声がしたかと思うと、急に誰かが手ぬぐいを取り払った。
視界が開けて、薄暗いロッカールームの光景が目に入る。
何人かのチームメイトが各々試合に備えて準備をしている。
だが自分の手ぬぐいを取り払った人物はその中にはいない。
後ろを振り向くと、そこに手ぬぐいを持ってニヤついている男がいた。
「……成通さん、何してるんスか」
「いやぁ、氏真が試合前に精神統一なんて珍しいな~、と思ったでおじゃる」
「そりゃそうっスよ、ポジション変えてから初の試合なんスから」
そう言いながら、成通さんから手ぬぐいを奪い取る。
成通さんは悪戯っぽい笑顔のまま『おお怖い怖い』と言っておどけて見せた。
この人はいつもこうだ。
裏ではこうしておどけて、チームのムードを盛り上げる。
だが試合では『蹴聖』と称されるその足業を遺憾無く発揮し、エースストライカーとしてチームを勝利に導くのだ。
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