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『ところでところでそこの君。君は恋をしたことがあるのかね、美術部員君』
「…は……?」
間抜けな声でキャンバス片手に振り返って、そこで初めて声の主が話した事のない、けれどもクラスメートの女子であることに気が付いた。
思わず、というか意外すぎる人物の登場にどうすればいいかわからず化石する僕。
そんな僕を察してか、彼女は美術室に溢れる春の光を浴びて、春先の花の如くにかっと笑って
『りはら!』
「………(何だ、そして誰だ)」
今度こそ僕は生きた化石みたくなった。
結局その謎のりはら!は僕の「……は」と掛けて萩原(はりはら、らしい。珍しい苗字もあったものだ)という彼女の苗字だった事がすぐ後になって判明するのだが、それを彼女が説明するまでの間僕はただ口を開けたままじっとしているしかなかった。
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