夏い夏

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もはや指定席となったそこにぐでっと座って、萩原は『そーいやーさー…』と気だるげに会話を始めた。 とりとめもない日常会話、いかにも友人同士の。言い方によっては生産性がない、薄っぺらい内容の会話。暇潰しの相手のようで友人同士の会話のようで、この何とも言えない距離感が僕は案外好きだ。(しかし僕は友人と呼べる友人は特別いないのだが) ひとしきり彼女の愉快な近況を絵筆片手にキャンバス目の前に聞き終えると(基本的に僕は画を描きながら話を聞いている)、萩原はどっこいせ、と思ってもいないような口調で言いつつ僕の近くまで椅子を移動させてきた。邪魔をしないための配慮か、彼女はあえて僕の視界に入らないように1m程右ななめに離れて描き途中の僕の風景画をまじまじと見る。
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