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「できることなら、ビンから出たい。出していただけたら、あなたの願いを何でも叶えて差し上げます」
もう何百年もビンに閉じこめられているという悪魔。確かに、少しばかし憐れだと男は思う。それに、願いを叶えてくれるというのにも興味が引かれた。悪魔に願いを叶えてもらえる機会など、まずないから。
「本当に願いを叶えてくれるのか?」
「もちろんです。早くビンから出してください」
悪魔はすすり泣きながら男に訴えた。
しかし、それは声だけの話だ。ビンの中で悪魔はニヤリと笑っていた。
この悪魔、実は自分でいう程、優秀な悪魔ではない。どちらかというと、落ちこぼれの方だ。大した力もなく、人間の願いを叶えるなど不可能だった。
悪魔は元来、人間と契約を結び、その魂を戴いていた。だが、この悪魔には人間と契約を結べる程の力は備わっていない。それでも、魂を持ってこいと、無理難題を突き付けられるのだから、困り果てていた。
そんな時、思いついたのが、ビンの中に入るという方法だ。
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