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「なんかさ…ちょっと安心したよ。俺の想像してた神様は、近付く事すら恐れおおい存在だったけどさ…誰かを思って泣けるあんたを見てると、凄いなって思ったよ。
俺は…本当の意味で相手の事を思って泣けるあんたが羨ましい。
俺には、相手を思いやる余裕なんて無かったからな。いつも自分の事だけだった。
だからあんたが羨ましいんだ。」
「な…泣いてなんかねぇよ!生意気言ってんじゃねぇ。」
「泣いてないじゃなくてさ…“泣かないようにしている”だけだろ?
あんたも、さっき言ってた魔王と同じだ。他の奴等の前では絶対泣かないとことかそっくりだよ。
だから魔王の気持ちも分かっ…「違う!」え?」
突然大声をあげた神様に驚いて、思わず聞き返した。
「俺のは…ただの自己満足だ。相手の事を思いやるフリをして“憐れんでる”だけなんだよ!
俺が神の頂点に立って暫くして、二十代目の魔王に言われた言葉が…今も頭から消えない。
貴様に俺の何が分かる。魔王でも無い貴様に…“無駄死にした先代達の思い”が分かる筈ねぇだろ!
って言われたんだ。俺は当時、一人で嘆いている彼を見て言っちまったんだ。」
「何て?」
「出来る事なら、俺が変わってあげられたらいいんだけど…。
お前らも辛いだろ?“無意味な事”をずっと続けて。
俺は分かってなかった。勇者と魔王の噂話しか知らなかった俺には、彼等の気持ちが分かる筈も無かったのさ。
アイツ等は…自分達の宿命を無意味な事だなんて“これっぽっちも思ってなかった”。
むしろ、アイツ等にとっては“神に与えられた唯一の誇り”だった。
それを俺は踏みにじった。だから…俺は凄くなんて無い。結局、俺のやった事は只の自己満足だ。」
「…そうだな。」
「え?」
「何だ?俺があんたに慰めの言葉でも掛けると思ったのか?あんたは正しい事をしたから自分を責めなくて良いと言うとでも?
俺はまだ人に説教出来る程生きてる訳でも、言える立場の人間でもねーけどさ、これだけは言っとく。
何が正しくて何が間違ってるかなんて…誰にも分かんねーんじゃないの?だからクヨクヨ悩むなよな…神サマ。」
「っ!?ハハハ。確かにお前みたいな年端も行かないガキが言う通りだ。」
「それってバカにしてんの?」
「いや?」
さっきまでメソメソしてたクセに、直ぐ元の飄々とした態度に戻った神様を俺は少し呆れながら見た。
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