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「昴…なんでだよ!俺を置いて…逝かないでくれよ。まだ話したい事とか、一杯あったってのに!!」
「龍。そんな事言わないでよ。昴だってそんな事望んでないと思うよ。」
『野葡…大人だな。龍、自分を責めるなって言っただろうが!まったく…聞いてなかったのか?』
『無駄だぞ。お前の声はアイツ等に届いていない。』
『何とかならないのか?少し話したいんだけど…。』
『なるぞ。でも、お前の声を聞けるのは五人だけだ。
本来は三人だが、お前は特別だ。きっちり話して来いよ。
本当に別れを告げたい大切な人とな。俺は此処で見てる。』
『ありがとな。』
五人の内二人は既に決まっていた。俺は自分の葬式会場を見渡して葬式に来ている人を見た。
俺の葬式に来ていたのは仕方なく来たであろうクラスメートと、俺を育ててくれた院長先生が来ていた。
しかし、自分の葬式を自分で見るってのは不思議な気分だな。
他には誰が来てるのか気になって辺りを見やると、御堂達と見知らぬ二人の男女が居た。
俺はその二人組に近付いた。
「ごめんなさい逞輝(トシキ)…私達の所為よね。
あなたには逞しく生きて欲しかった。
太陽の様に輝いて、日だまりの様な笑顔でいて欲しいと願っていたのに…。
私は正反対なことをしてしまった。あなたを一人にする気は無かったのよ…!」
「私も…済まなかった。あの時はお前の事を考えられる余裕が無かったんだ。
だから施設の人に無理を言って引き取って貰った。
本当は、お前が十八になったら一緒に暮らそうと…準備…をして…うぅ。
本当に済まなかった…!」
『父さん、母さん。俺はあんた達を恨んでなんかいねーよ。
俺を産んでくれてありがとな!母さん。父さんも、俺が思ってた通りの人だよ。
へへっ!ずっと会いたかった…。俺は死んじゃったけどさ、こうして会えたのは…やっぱ嬉しいな。』
「逞輝!逞輝なのか!?どこに居るんだ!」
『父さん達の目の前だよ。二人共…俺の葬式に来てくれてあんがとな。小さい頃から…ずっと会いたかったんだ。
俺の父さんと母さんはどんな人だろってさ、考えだしたららキリが無くてよ…そればっか考えてたら、ワクワクして寝れなかった時もあったなぁ。
ずっと会いたいって思ってたから、こんな形でも二人に会えてさ…今、すっげぇ幸せだ!ありがと。』
「逞輝!」
母さんが涙を流しながら俺の名を叫んだ。
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