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突然叫んだ母さんに皆の視線が集中した。
そりゃそうだろう。端から見たらいきなり母さんが誰かの名前を叫んで泣き出したんだから。
そんな中、院長先生と親友の二人が来た。
「昴く…いいえ。逞輝君のお母さんですね?お久しぶりです。」
「えぇ。お久しぶりです。そうですか…あの子は昴という名前なんですね。」
「えぇ。施設の皆で付けたんです。」
「そうですか…逞輝は、元気にやってたんですよね?」
「えぇ。「ちょっと待てよ!」どうしたの?龍君。」
「あんた達、昴の両親なんだろ?なんで昴を捨てたんだ!」
「それは…『止めろ!』逞輝?」
「昴?昴か?どこに居るんだ!」
俺が縋る様に神様の方へ目を遣ると頷いてくれた。
どうやら、俺の言いたいことが分かったらしい。特別だぞって口動かしてたし…。
俺は皆の前に姿を現した。
「昴!」
「「逞輝!」」
「スー!」
「昴君!」
『母さんと父さんにはさっき言ったけどさ、皆…今日は来てくれてありがとな!
俺の為に来てくれたってのが、滅茶苦茶嬉しいわ。自分で自分の葬式見んのは複雑だったけどよ、一つ言いたい事がある。』
「何だよ?」
『見てたぞ龍…俺が死んだ時、言っただろ?自分を責めるなって。ちゃんと伝わって無かったのか?』
「ちゃんと伝わってたさ!でも…あの時、俺が気付いてたらお前は死ななかった!」
『龍…俺が死んだのはお前の所為なんかじゃねぇよ。お前は俺がガキん時からずっと…俺の事、助けてくれただろ?
だからさ、いつまでも守られてばっかなのはイヤだったから…お前を守れて良かった!』
「で、でも!」
『泣いてんじゃねぇよ。野葡を見ろ!あんなに弱虫だったコイツが泣いてねぇんだぞ。
野葡…お前が龍を守ってやってくれ。俺にはもう…出来そうにも無ぇからよ。』
「昴。出来ないよ!僕は…僕は弱虫だし。」
俺は今にも泣きそうな野葡を見て、思わず頭を撫でようと手を伸ばした。
だけど、俺の手は野葡に届かなかった。それを見て、あぁ…俺はやっぱり死んだんだなって、冷静に思った。
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