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野葡の頭をすり抜けた手を呆然と見つめながら、俺は思わず笑ってしまった。
何だかんだ言っても、やっぱり自分が死んだっていうのは、そう簡単に受け入れられねーみたいだ。
俺もいい加減未練たらしいな。俺は死んだんだ!こいつらとは違う!自分に言い聞かせながらまた笑った。
『ハハハ。もうお前達には手が届きそうもねーな。良いか?野葡…お前はもう弱虫なんかじゃねーよ。弱虫だったお前はもう居ねぇ。自分に自信を持て!
龍の事は頼んだぞ。拒否権は無しだ!お前に拒否られると、成仏出来ねぇからな。龍は泣き虫だから、お前がしっかり支えてやれよ。』
「昴…僕に、僕なんかに出来ると思う?」
『出来る。なんたってお前は、俺の自慢の親友だからな!心配しなくてもお前等とはまた会えるさ。
お前等がコッチ側に来るまで、気長に待っててやるから、爺さんになるまで…なってからも生きろよ!…約束だぞ?』
「…分かった!」
「何言ってんだぁ昴?野葡を守るのは俺だっての!
ノブは昔のお前と一緒で泣き虫だからな!俺が…俺が、守って…やんねぇと。」
『ハハハ。今のお前を見たら、どっちが泣き虫か分かんねぇな。
龍、野葡…さっきも言ったけどな…俺の分もしっかり生きて、そんでもって…楽しく生きろよ!』
気を抜くと溢れそうになる涙を我慢して、二人にニカッと笑い掛けて、両親に向き直った。
『母さん、父さん。あんまり自分を責めないでくれ。
俺はさ…二人には笑ってて欲しいんだよ。会いたかった二人に会えてさ、ホントに幸せなんだ。
ガキん時から会ったら何しようって思ってたけどさ、ずっと…二人が笑った顔を見るのが夢だったんだ。だから…笑ってくれよ。』
「トシちゃん…そうね!泣いてばかりじゃいられないわ。ね?父さん。」
「そうだな…逞輝。立派に育ったな。お前とは一緒に暮らせなかったが、こうして話せて、良かったよ。」
『そうそう。そうやって笑ってくれ。
とこれでさ…もしかして、トシちゃんって…俺の事か?』
「そうよ!会ったら呼ぼうって決めてたの。」
『トシちゃん…か。ハハハ。何か、可愛いな。』
「そうでしょう?」
『うん。』
涙を流しながらも笑う二人を見て実感した。やっぱ、笑顔が一番だな!
あとは院長先生に挨拶したら、お別れだな。あぁ…寂しいな。
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