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誰も答えてくれないから最初の子に聞いてみた。
「なぁ、人の悪口言って笑うのって…そんなに楽しいの?それがあんた達にとっての“普通”なの?
俺はさ…何時も言われる側だから分からないんだ。だから教えて欲しいんだけどさ、教えてくれる?」
「た、楽しいかだと!?」
「うん。楽しいの?」
「た、楽しいに決まってんだろ!お…お前らが泣きそうな顔してんのとか、マジ笑えるし…。」
「う~ん。その割には楽しそうに見えないよ?汗かいてるけど大丈夫?」
「な、何なんだよお前!気持ち悪ィい!楽しいかどうかなんてどうでも良いだろうが!!」
「どうでも良いって言ったよな?」
「な、何だよ?」
「じゃあ、俺もその子も…そんな“どうでも良い事”の為に悪口言われてたのか?」
「そ、そうだよ!わ、悪いか?」
「悪いって云うか…可哀想だよ。俺より、あんた達の方が…よっぽど可哀想だよ。
両親が居るか居ないかとかさ、名前とか見た目の事とかよりもさ…そんなのより、大事な物って無いのか?
見てるだけじゃ分からない事ばっかなんだから、見えない物も知ろうとするのが正しいんじゃないの?
」
「そんなの…分かんねーよ。」
「そっか。でも、あんたが俺の立場だったら…きっと、分かるんじゃないかな?」
「…。」
黙り込んでしまった同級生を見やり、少年へと向き直った。
「名前…何て言うの?」
「唯、野葡太。」
「そっか。野葡太か。良い名前だな!俺は昴(スバル)。宜しく!」
「よ、宜しく!昴くん!」
「スーで良いよ。俺もノブって呼ぶからさ。」
「っ!!うん!」
黙ったままの同級生にも向き直って手を差し出した。
「あんたも、よろしくな!」
「あぁ。よろしく…。」
一丁前に説教した相手は…苦笑しながらも手を握り返してくれた。
これが俺達の出会い…俺達は直ぐに“親友”になったが、クラスが同じだったのは一回だけだった。
再び再会したのは高校の入学式。俺は直ぐにノブだと分かったけど、向こうはそうじゃなかった。
「お前…捨て子なんだろ?可哀想だな!」
周りはそんな簡単に変わりはしない。それを再確認した。
でも、違って欲しくて尋ねた。
「俺の事…覚えてないのか?」
「は?」
「いや…ごめん。人違いだったよ。」
「?」
訳が分からないという顔をしているノブを置いて俺はその場を去った。
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