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「唯…先に教室、行ってるから。さっきは言い過ぎたよ。ゴメンな。」
「っ!何なんだよお前…!!」
「じゃあな。」
唯をチラッと振り返って教室へと足を進めた。
あの時助けてくれて嬉しかった。何度も言おうとした言葉が喉から出てきそうで、それを悟られない様に早足で歩いた。
一度は仲良くなったものの、クラスが別れて親友と過ごす内に…少しずつノブの事を忘れていったのが後ろめたかったのを思い出す。
こんな話…周りからしたらどうでも良いことだろうけど、やっぱ素直になんのは難しいモンだな。
なぁ…俺の事、覚えてる?初めて会った時みたいに聞きそうになる度に、返事が怖くなって止めてしまう。
何で僕を忘れてたの?親友って云うのは、嘘だったの?
と責めるノブの顔と声が聞こえてきそうで、無理だった。俺は…何て女々しい男なんだろうか。
何時までも過去を悔やむばかりでは何も始まりはしないけど、思考は同じ所をグルグルと回るばかりだ。
ループする思考を止めたくて、口に出して呟いた。
「あぁ…。ノブって、もう一回呼べたら良いな。やっぱ、言えねぇわな。
でも、近い内に必ず…ノブって呼んでみせるさ。メソメソしてるのは性に合わないし…。」
でも、俺が唯の事を正面きってノブと呼べる日は来なかった。
まだ、この時の俺は気付いていなかったけど…もう、運命の歯車は動き出していた。
一度回った歯車は止まる事を知らないかの様に回っていく。
誰も気付かないその裏で…確かに歯車は回っていた。
多くの者を巻き込みながら…時は静かに過ぎていった。
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