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僕は鐵(クロガネ)が出ていくのを横目で見送った。
アイツが朝言った事が、どうしても気になって仕方が無かった。
だから、後を付ける事にした。
尾行を手伝って貰うために父さんに電話をかけた。
「はい。唯進次郎ですが?」
「僕だよ。実は頼みがあって電話したんだけど、時間ある?」
「何だ野葡太か。時間はあまり無いから手短に頼むぞ。それで?言ってみろ。」
「鐵っていう捨てられた奴いるでしょ?」
「あぁ。それが?それより、その言い方は止めろと言っただろ?
彼に失礼だ。野葡太もそんな事言われたら嫌だろう?
昔のお前ならそんな事は言わなかっただろうに…。何故こうも変わってしまったのやら。」
「そんな事より、早く車を寄越してよ。アイツの後をつけるんだ。」
「はぁ。何でも良いが、程々にな。…昔の優しいお前が戻ると良いな。」
「うん。」
電話を切って校門まで走ると、既に迎えの車が来ていた。
「鐵の近くへ連れて行ってくれ。」
「分かりました。」
運転手に声を掛けながら乗り込んで暫くすると、鐵達の姿が見えた。
「此処で降ろして!」
「はい。」
素早く車から降りて、鐵達から少し離れた所に隠れた。
二人が歩き出した時、向こうからトラックが凄い速さで突っ込んでくるのが見えた。
「な!?(僕の場所からじゃ…間に合わない!)」
咄嗟に隠れた場所から出て、鐵の所へ走ったが…日頃の運動不足が祟って直ぐに息が切れて立ち止まってしまった。
だけど、危険を知らせようと叫んだ時にはもうトラックは近くまで迫っていた。
「危ない!」
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