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「確かに、女生徒を連れ出して朝礼をサボるくらいは、大したことじゃないさ」
廉の後ろから会話に混ざって来た二人組みが、廉のすぐ横の机に寄りかかるように立った。
「女生徒を連れ出した?廉が?どの女生徒?なんで?朝礼の時に?」
「龍ちゃん、質問ばかりで、答える暇がないんだけど」
溜め息がちに、龍之介のすぐ隣にいる男子生徒が、龍之介の頭をなだめるようにした。
「あっ、ごめん。だって、廉が朝礼抜け出した、って言うから」
「そうだな。女生徒を連れて、颯爽と消えて行ったのは見えたけど」
「女生徒?誰?」
「さあ」
二人組みが揃って肩をすくめるようにするので、龍之介の眼差しがまた廉に戻された。
「さあ」
廉までも同じように肩をすくめてみせるのである。
「知らないの?知らないのに、一緒に抜け出したって?」
「抜け出したんじゃなくて、気分が悪そうだったから保健室まで連れて行っただけだよ」
「そうなのか?――なーんだ。廉が女生徒と一緒に抜け出すなんて、誰かと思っちゃったぜ」
「別に、刺激のあるような話でもなんでもないんだけどね」
「なーんだ。そうだったのか」
残念、と明らかに言いたげなその顔が、少し口を尖らせていく。
くすっと、少し笑った廉は隣の二人に視線を向けて、
「随分、目がいいようで」
「まあ、それくらいは」
「そうそう。壇上からだったら、結構、何でも見えるしな」
「でも、全然、反省してる様子がないな」
「ああ、でも、一応、保健室に行ったという理由があるから」
飄々とそんなことを口にする廉に、二人はちょっとだけ口元を上げていた。
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