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すぐ隣の後列にいる男子生徒の一人は、見慣れない女生徒が列に混ざって来た時点から、その女生徒に気がついていた。
隣近所は、視界の端から、突然、混ざって来た気配程度の動きを察しただろうが、そんなことに構う風もなく、それぞれに真剣な様相で、今月の生徒会の報告を聞いている様子である。
元々、男子生徒の数が女生徒の数を上回っているので、どのクラスも男子の列が女子の列よりも長いのが普通だ。
それだけに、隣の列に混ざった女生徒は、向きを変えずとも、そのまま真っ直ぐに視界に入ってきたのだった。
ちらっと、見下ろした袖口は青のラインが刺繍させれている。そうなると、同学年でもなく一年下の2年生ということになる。
なにを思って3年のラインに混ざるのかは知らないが、全校生徒が集合するこの朝礼にまでも遅刻してきて、違う列に並ぶ女生徒が珍しくて、つい、その男子生徒もそこの女生徒の後ろ姿をなんとなく眺めてしまっていた。
だが、微かにうつむいたその様子が普通には見えなくて、少しだけ見える横顔がなんだか青ざめているようにも見えないではない。
スッと男子生徒の足が音もなく動いていた。
女生徒のすぐ真後ろに来た時に、ふっ――とその体が崩れかける。
男子生徒は全く態度も変えず、腕を伸ばしてその女生徒を抱き留めていた。
腕に一気に伸し掛かってくる体重の重さからいっても、気を失っているのは確かだった。
全く何でもないことのように、男子生徒はその女生徒の腰を支えながら、ゆっくり、静かに後ろに下がりだした。
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