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「あら、どうしたの?」  もうそろそろ朝礼が終わる頃だろうと、時間を見計らっていた男子生徒の前に保健医が戻って来た。  全校生徒が集合する朝礼で、全教員も参加しているであろう事実から、女生徒を運んできた男子生徒は勝手に保健室に入っていた。  やはり、誰もいなくて、それで、衝立の後ろのベッドに勝手に女生徒を寝かせて行った。  運んでいる間も、寝かせている間も全く起きる様子がなくて、つん、と確かめるように男子生徒が顔に触れても、そこに寝かせた女生徒は気を失ったままだった。  どうやら、気を失ってから、そのまま眠りに入ったようでもある。 「ええ、まあ――貧血の女生徒を運んできまして」 「貧血?――どこ?」  きょろっと、保健医がその場を見渡すが、話題の相手は見当たらない。 「ベッドに寝かせてあります」 「あら、そうなの?」  それで、保健医が白い布が掛かっている敷居を抜けて、スタスタと向こうに歩いて行った。  一応、男子生徒もその保健医の後をついて行く。 「この生徒?」 「ええ、そうです」 「寝てるんじゃない?」 「そう見えますね」
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