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ガガガ…ガガガ…ガガガ…
夢の中から俺を引きずり出そうとせんばかりの爆音がアパートに響く。
「ガガガガガガうるせぇ!!」
音の主は知ってる。アパート前の歩道を工事してるからだ。
このどうしよもない怒りをぶつける所がなく、とりあえず静かなところに散歩に行くことにした。
静かなところはいいねーなんて歩きながら考えてたとき、遠くから呼ばれた。
「田中ー」
「ん?」
振り替えると高校時代の友達がいた。
頭が良くて顔もそこそこ、性格が若干気に食わないけど、悪いやつじゃない。
「何してんの?」
とりあえずここに来た経緯を愚痴混じりに話した。
「あーあるあるそう言うこと」
やっぱほかのやつもあんのか。
「あいつら低脳だからしかたねーよ。若いときに遊びまくってろくに勉強もしねーで、どーせ中卒のバカどもの集まりだろ?」
「んーまーそーかもなー」
でた、ちょっと言い過ぎるこいつの悪い癖。
てか、高校卒業して、職にすら就いてねぇ俺は?笑
「じゃ俺そろそろ帰るわ」
「おう、じゃーなー」
その帰り道アパートの前で工事現場の隣を通った。
その時の光景は今でもたまに思い出す。
もう50近いくらいの叔父さんが煉瓦のようなブロック式の歩道のブロックを一つ一つ組み合わせていってたんだ。
人の手で何メートルも何十メートルもある歩道を。
隣に若いやつも居て怒られながら必死にやってた。
体をくの字以上に、むしろ半分に折り畳んだような姿勢でこつこつと。
思ったんだ、あぁこの世に要らない職なんて無いんだって。
要らない人間なんていないんだって、どんなバカでもアホでも天才でも給料が高かろうが安かろうがどんな場所で働いていよーが。
何か気持ちがほっこりしてきてさ、また、俺も明日から頑張ろうって思った。
「叔父さんありがとう」
小声で呟いた。叔父さんだけじゃない皆皆…
「ありがとう」
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