26人が本棚に入れています
本棚に追加
「光輝。ダイバージェンス・クォーツは?」
章太郎が無愛想に尋ねた。
「ん? ああ、持ってる。えーと、ちょっと待てよ」
光輝が制服の上着ポケットをごそごそと漁り、透明なキューブを取りだした。大きさは野球のボールくらいで、サイコロ状になっている。
「……0.546783」
「レベル5か」
光輝がキューブの中心に浮かび上がった青く光る数字を読み上げると、章太郎はカード型の携帯端末を取りだして『照会アプリ』を起動させ、すぐに光輝から聞いた数字を打ち込んでゆく。
章太郎の記憶力はかなりなもので、電話番号の百や二百くらいなら、簡単に暗記できた。
「あった。三年前にも、誰か来ているな。その前にも、たくさん来ている。生還率は……おっと、ラッキー。八七パーセントだ」
章太郎がにやりと笑う。
「そっか。章太郎、今のレベルは?」
光輝も章太郎の端末を横から覗きこんで、にひひと笑った。
「ぼくはこの間、レベル6に上がった」
章太郎は顎を上げ、光輝を見下した。そこには「お前とは違うんだ」という態度が見て取れる。
ひゅううと吹いた風が、章太郎の髪をさらさらと揺らした。
「へー! 凄いじゃんか!」
光輝はそんなことなど気にしていない。いや、気付いていない、と言った方が正確だ。
最初のコメントを投稿しよう!