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「ふ。優しいな、柏木さんは。いいんだ。おれは、ただ後悔したくなかった。それだけなんだ。
つまりこれはおれのエゴであり、柏木さんにはなんの後ろ暗いこともない。だから、はっきりと断ってくれても、おれはぜんっぜんっ! かまわないんだからぁー。うおうおうおうー!」
「きゃあぁっ! ダダダ、ダメぇ、南条くんっ! そんなに気持ちを昂ぶらせたらっ……!」
今の光輝にまともな話は通じないと悟った星花は、腕を思いっきり突っ張った。
「げぶっ」
どん、と星花に突き飛ばされ、光輝がよろよろと後ずさる。
それを強い拒絶と受け取った光輝はかなりのショックを受けたらしく、もう泣きそうになっていた。
「うえぇぇ。ひどいよ、柏木さぁん。そこまで嫌わなくってもいいじゃないかぁ」
光輝はよろよろと後ろに下がる。胸の光は激しさを増した。
「ちちち、違うの! 気付いてないの、南条くん? 早く、早くその胸の!」
星花が手を伸ばした。
「胸ポケットの《ダイバージェンス・クォーツ》を、どこかに捨ててぇーっ!」
シアンの輝きが一際強烈に瞬き、辺りを包み込む。
そこで、光輝はようやくにして気がついた。
自分が、してはいけない事をしていたことに!
「え? あ。わ? わあぁぁぁぁ!」
「南条くぅーんっ!」
星花の絶叫とともに。
光輝は、その場から姿を消した――。
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