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「おーい、章太郎? 出口の場所は分かったんだろ? なら、もう行こうぜー」
「はっ。あ、ああ」
過去の暗い記憶から呼び戻され、章太郎は我に返った。
「こっちだ。近いな。運が良かった」
「そっか。さー、早く帰って、柏木さんに返事をもらおーっと。……て、返事は分かってるんだった……しくしく」
光輝と章太郎は崖を下るべく、歩き出した。
と、
「あ」
「うわ。しまったな、これは」
崖下で蠢いていたゾンビの一部が、すでに下から登って来るところだった。
距離は二〇〇メートルほど。
おおおおおと不気味な咆哮を上げながら、光輝たちを目指している。
「章太郎。あいつらの向こうか、出口って?」
「ああ。やつらを抜けなければ、辿り着けん。ぐああ、くそっ。なんて不気味なやつらなんだ。数は……一八四体、か。やれるか?」
肩を振り回す光輝に、章太郎が尋ねた。
「よゆー。だからさ、章太郎」
光輝の寝癖だらけの髪が、ざわざわと逆立ってゆく。
「うん?」
「目を閉じてた方がいいよ。もうかなりぐちゃぐちゃだけど……もっと、ぐっちゃぐちゃにするからさ!」
そう言い放った光輝の手が、ゾンビたちにかざされた。
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